人口減少社会の精神保健の開発

全国精神保健福祉連絡協議会(以下、本協議会)は、ライシャワー駐日大使刺傷事件や精神衛生法改正問題など、精神衛生が熱くたぎる1963(昭和38)年に誕生した。その目的は、各地に誕生した精神衛生協会の横連携を図り、精神衛生運動の牽引車となることであった。
昨年、本協議会は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行下、静かに60周年を迎えた。
この間を振り返ると、精神衛生法は精神保健法、精神保健福祉法と改正された。そして精神医療も地域でサービスが受けられる方向に発展してきた。それだけでなく、メンタルヘルスの問題がさまざまな社会事象に関連していることが認識されるようになり、児童虐待、DV、自殺対策など、幅広い領域に精神保健の参画が求められるようになってきた。精神保健は、医療施設の整備から始まり、地域で精神保健サービスを受けられる方向に進み、そして社会機能に統合される方向に進んでいるのである。
ここで私たちはもうひとつの重要な変化に着目する必要がある。それは急速に進む人口減少である。国土交通省「国土の長期展望」は、2008年に1億2,808万人とピークを迎えた人口は、2050年に1億192万人、2100年に5,972万人になると報告している。
日本全国の人口について言うと、私たちは、明治期以降、増加は経験しても、減少する社会はほとんど経験してこなかった。私たちの考えることは、ついつい人口増加の時代の発想に引きずられるのだ。
精神保健政策にも人口減少という変化に対応した発想が求められるが、それは、人口減少の進む中山間がすでに経験していることであろう。
本協議会は、精神衛生が精神保健、精神保健福祉に発展する時期を経て60年目を迎えたが、次の60年は人口減少社会に対応した知恵を発展させる時代となる。
本協議会は、コロナ下において、経費の節減を図りつつ、各地の精神保健福祉協会との連携づくりに取り組んできた。また、自殺対策の推進、第二次世界大戦の長期的影響、アートをとおしてのメンタルヘルスの啓発などに取り組んできた。
そして2023年の総会では、スピリチュアルケアとメンタルケアの連携はますます重要になっていることを踏まえ、その連携に向けての対話の場をもった。
本協議会は小さい組織であるが、小さいからこそできることがある。
各地の精神保健福祉協会と連携しつつ、次代の精神保健の方向を示していきたい。

(会報2022年号会長あいさつによる)

全国精神保健福祉連絡協議会
会長 竹島 正
(川崎市総合リハビリテーション推進センター所長)

過去のトピックス


2024.01.25
本協議会主催による保健所・精神保健福祉センター・市区町村等を対象にした「相談支援におけるトラウマインフォームドケア研修―虐待サバイバーとともに考える」(3月8日)を開催します
2023.10.30
2023年度統計数理研究所共同研究集会「持続可能な自殺対策の構築-自殺対策基本法20周年に向けて」(12月1-2日)を開催します
2023.09.22
会報2022年号を掲載しました
2023.06.03
7月19日に講演と対談「スピリチュアルケアとメンタルヘルスケアの連携―揺れ動く社会の中でー」を開催します
2023.05.15
過年度報告を掲載しました
2023.05.15
役員名簿を掲載しました
2023.02.10
コラムを掲載しました
地方協会名簿を更新しました
リンク集を更新しました
2023.01.10
令和5年2月17日・24日の2日間、保健所、精神保健福祉センター、市町村職員向けの相談支援におけるトラウマインフォームドケア研修を実施します(参加費無料、ウエブ開催)
2023.01.10
各都道府県等の精神保健福祉協会のサイトを掲載しました
2022.11.17
「行動制限最小化の普及のために−コア・ストラテジーとTICを学ぶ−」を開催します
2022.09.26
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の世界的流行後における自殺予防・遺族支援のあり方に関する学際的研究集会「自殺対策の持続可能な発展に向けて」が開催されます。本協議会はこの研究集会に協力しております。ぜひご参加ください
2022.09.26
「日本における第二次世界大戦の長期的影響に関する学際シンポジウム2022-戦争について語ること、セーフスペースを考える-」を開催しています。本協議会はこのシンポジウムに協力しております。ぜひご参加ください。
2022.01.25
新型コロナウイルス感染症の世界的流行下における自殺予防・自死遺族支援のための学際的・共同研究集会の報告を掲載しました
2022.01.06
全国精神保健福祉連絡協議主催、TICCこころのケガを癒すコミュニティ事業(Trauma Informed Care/Community:TICC事業)の企画協力にて「第1回トラウマインフォームドケア企画研修」を開催します
2021.09.27
新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行下における自殺予防・自死遺族支援のための学際的・共同研究集会が開催されます
2021.08.11
「Trauma Lens-こころのケガに配慮するケア」が公開されました
「TICCこころのケガを癒やすコミュニティ事業」が公開されました
「こころとくらし-精神障害当事者の地域生活にかかわる研究結果紹介サイト-」が公開されました
2021.06.21
アーカイブスを設け、クラーク勧告を掲載しました
2020.04.21
トップページに「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大-私たちにできること」を掲載しました
2020.03.11
30年度報告元年度計画を掲載しました
会報(No.63)を掲載しました
2020.03.04
ワークショップ「コミュニティのトラウマとメンタルヘルス-第二次世界大戦のトラウマとケア-」の要旨を掲載します

更新履歴

ガイドライン報告書

研究報告書 バーチャル美術館 研究報告書

WHO自殺を予防す